PROJECT STORY

マンション再生 長寿命化 給排水管更新

事例詳細「スムーズに専有部も含めた設備改修を実現し長寿命化」マンションストック長寿命化等モデル事業の活用も

  • 建物

    マンション

  • 課題

    改修・長寿命化 コスト削減・収益向上 設備改修

  • 関連サービス

    大規模修繕コンサルタント 長寿命化コンサルタント 環境・設備コンサルタント

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INDEX

  • 設備改修の検討着手

    背景

    インペリアル東久留米(東京都東久留米市)は1989年に竣工した分譲マンションで、5棟(住棟4、店舗棟1)419戸、敷地内には共有のテニスコート、公園、集会所、そして店舗も設けられた大規模マンションであり、「築100年マンション」を目指して長期修繕計画に基づく計画修繕を実施してきていた。 マンション住棟内の給水管・給湯管・排水管には金属系・樹脂系配管が利用されており、最も頭を悩ましていたのは銅管を使用している専有部給湯管からの経年劣化による漏水事故で、2007年から2018年までの間に14件の専有部給湯管の漏水事故が発生していた。 給湯管からの漏水は、増加傾向を示していたが、専有部であることもあり、管理組合としては都度対応を繰り返えしていた。


    漏水事故対応で採取された給湯管

    動き始めた管理組合

    2018年に発足した第3回大規模修繕委員会では、状況を危惧し、ある設計コンサルタントに依頼し、住棟内設備の予備調査を実施したところ、給湯管に限らず他の配管においても改修の時期を迎えていることが判明した。


    住棟内設備の状況


    そこで、管理組合は設備改修を計画・実施するために適した設計コンサルタントを探し、「マンション総合コンサルタント」である翔設計にコンサルティング業務を依頼した。

  • 設備改修の方針を定める

    設備改修計画の始動

    漏水発生状況から喫緊の課題は専有部給湯管であったが、共用部排水管に顕著な劣化が確認されたことから、まずは共用部排水管の更新を実施する計画立案がスタートした。


    共用部排水管内部の状況


    共用部排水管更新の際には住戸内(専有部)に入室して工事作業を実施するだけでなく、生活制限(排水制限・断水・断湯)や専有部内の床や壁を解体復旧するなどの建築付帯工事がともなうという特徴がある。


    住戸内床下の配管(イメージ)


    この特徴は専有部給湯管の更新にも当てはまるため、この機会を有効に活用し、展開ができれば、区分所有者の理解を得た上で専有部給湯管改修が進むものと判断し、共用部排水管の改修を修繕積立金で実施する際に、各区分所有者による給湯管改修の実施を促す、という方針で計画を策定し、管理組合から区分所有者に提供する専有部給湯管改修の推奨プランも作成した。

    区分所有者の要望

    修繕積立金による共用排水管更新、そして同時実施を推奨する個人負担での給湯管改修についての説明会を実施したところ、区分所有者から、給湯管改修も修繕積立金を使って実施して欲しいという意見が多くあった。 そこで、区分所有者の要望に応えるため、当初の計画とは異なる「マンション住棟全体での設備改修」を検討することになった。


    改修方針の変更

    本来、専有部である給湯管の維持管理を行うのは区分所有者であり、管理組合ではない。 しかし、築100年マンションを目指す管理組合として、専有部給湯管の改修を区分所有者個人に委ねることを問題視し、設備系は「共用部」の配管・機器から、「専有部」の配管・器具に枝分かれしていく「構造上一体となったシステム」で構成されていると判断し、局部的な劣化による機能不全をマンション住棟全体での改修により予防することが合理的だという考えに至った。

    その結果、区分所有者の要望に沿った「マンション住棟全体で共用部排水管更新と専有部給湯管の改修を実施する」という方針に変更された。

  • 設備改修計画の立案

    課題の抽出、検討

    マンション住棟全体での共用部排水管更新と専有部給湯管の改修計画を立案するため、課題の抽出・検討に着手した。 課題は技術的な事だけでなく、規約改正や資金計画、合意形成など多岐にわたり、総合コンサルタントとしての経験と能力が試されることとなった。


    本当に合理的なのか

    今回の「マンション住棟全体で共用部排水管更新と専有部給湯管の改修を実施する」ことが本当に合理的なのか、という事を改めて検証した。 当初、管理組合が目論んでいた「共用部排水管の改修を修繕積立金で実施する際に、各区分所有者による給湯管改修の実施を促す(給湯管改修の発注者は区分所有者)」とした場合、工事の発注者が2者(共用部排水管改修は管理組合、専有部給湯管改修は区分所有者)となるため、工程・責任範囲等が混乱しないように、入室作業が別工程で進行していく必要があり、それに付随した生活制限および建築付帯工事も2度にわたることとなる。 これでは共用部排水管改修の特徴を活かしきれておらず、経済的合理性が低いだけでなく、住民の精神的負担が大きいと判断した。

    一方「共用部排水管改修と専有部給湯管を管理組合で実施する」場合では、発注者を一元化することができ、共用排水管での入室作業と同時に進行させて工程・責任範囲等の混乱を防げることとなる。また、付随する生活制限や建築付帯工事も今回工事で集約可能であるため、 重複する工程・作業範囲を一度に取りまとめることができ、経済的合理性が高く、住民の精神的負担も最小限に抑えられると判断した。 これにより、「マンション住棟全体で共用部排水管更新と専有部給湯管の改修を実施する」ことは合理的である、という結論を再確認した。

    修繕積立金を専有部の改修工事に充当して良いのか

    実行に向けた課題として、修繕積立金を専有部の改修工事に充当して良いのか、という問題がある。本来、修繕積立金は、建物の壁や屋上、エントランスなど共用部分を維持・修繕するために必要な資金である。その修繕積立金を専有部の改修工事に充当することは許されるのだろうか。

    翔設計では過去にも「構造上一体となったシステム」として専有部の設備を修繕積立金で実施した実績があり、その際は過去の判例等を根拠としつつ合意形成を得ていた。さらに令和3年6月22日に改定された「マンション標準管理規約 コメント(国土交通省)」において「共用部分の配管の取替えと専有部分の配管の取替えを同時に行うことにより、専有部分の配管の取替えを単独で行うよりも費用が軽減される場合には、これらについて一体的に工事を行うことも考えられる。」と記載されたこともあり、今回は一定の合理的理由に基づく範囲で充当可能と判断した。 また、計画の実行に際しては、弁護士の指摘やアドバイスも取り入れながら詳細を検討し、規約改正などの段階を踏んで進めた。


    参考:「マンション標準管理規約」の改正について(国土交通省)

    共用部排水管・専有部給湯管とともに改修すべき設備はないか

    喫緊の課題である共用部排水管の更新、そして区分所有者の要望である専有部給湯管の改修を実行するのであれば、当然他の配管も同時に改修することが合理的なのではないか、という考えに至る。 そこで、住棟内設備の他の配管について確認したところ、共用部給水管と専有部排水管(一部)において使用されている金属管において一定の劣化進行が認められた。 (専有部給水管、共用部給水管の一部、専有部排水管の一部、共用部排水管の一部、においては樹脂管が使用されており、腐食等の劣化は無かった) そこで、共用部給水管と専有部排水管(一部)なども含めた金属管全てを同時施工することが合理性が高いと判断した。


    工事計画範囲の一例(実際は住戸タイプごとに作図)

    給水方式変更はできないか

    給水管・給湯管・排水管の劣化とは別に、過去に検討しつつも解決していない課題として、給水方式の変更があった。 マンションの給水方式を現状の受水槽と加圧給水ポンプによる加圧給水方式から、増圧直結給水方式に変更することで、衛生的な水の供給や維持費の低減が期待できるということで検討したが、当時業務を行っていた設計コンサルタントが「建物の高さが増圧ポンプの能力を超えており、増圧直結給水方式への変更は出来ない」という見解を示したため、諦めていた。< /br> 翔設計は近年、認められるようになった直列多段型の増圧直結給水方式(途中階に増圧ポンプを直列に設置し、高層階へ直接給水する方式)を採用することで実現が可能であると考え、再検討に着手。中間階に住戸から離れた増圧ポンプ設置場所を見出し、増圧直結給水方式への変更を今回の計画に組み込み、高層階を含めた全住戸への衛生的な水の供給と維持費の低減を提案した。


    直列多段型の増圧直結給水方式(イメージ)

    停電時の水供給

    現状は地下に受水槽があり、そこから加圧給水ポンプによって各住戸に給水していたため、停電時には非常用発電機による電力供給がなければ全住戸で給水不可(ただし地下受水槽の非常用取水口からの供給は可能)となってしまう。 ところが増圧直結給水方式に変更すると、停電時には増圧ポンプが停止してしまうため、非常用発電機による電力供給がなければ高・中層階への給水は不可だが、3階程度までの低層階においては電力供給がなくても水道本管の圧力により給水が可能になる。 また、本管からの圧力で採水可能な取水設備を地上階に設置できる計画を盛り込み、今回の改修に合わせて、有事の際に水を上階に供給するルールを制定することとした。

    どのような仕様に改修することが最適なのか

    共用給水管を改修の対象に加えるのであれば、竣工当時から使用している金属系配管を全て取り換えることになる。よって、年数の経過にともなう錆腐食による赤水発生や漏水リス給水管を改修の対象に加えるのであれば、年数の経過による錆腐食による赤水発生や漏水リスクなどを避け、期待耐用年数の長い樹脂管および樹脂継手へ更新し、オール樹脂化すること最適であると判断した。これにより以降の給水管・排水管・給湯管という設備全体での長寿命化を図る計画とした。


    今回を機に気が付いた新築当時からの問題点

    マンションの地下ピット内には給水・排水・ガス・電気と建物の主幹となる配管・配線が敷設されていることが多く、このマンションでにおいても同様である。 ところが、今回の改修計画立案の過程で、各棟の地下ピットに入るための入口が存在せず、工事の際に1階住戸内の床下収納を解体しないと入れない、という事が判明した。これまで地下ピット内の点検が全くなされないままだったという事実も問題であるが、何よりも、今回の計画には地下ピット内工事が含まれており、入坑することが必須である。 関連して、地下ピット内工事は住戸内の配管工事とは別日程で実施するため、該当する1階住戸において工事中の負担が大きくなってしまうだけでなく、以後のメンテナンスの際にも負担が掛かってしまう。 そこで今回の計画に、不足している地下ピット入口を共用廊下に新設することを含めた。


    地下ピット内

    居住者の生活負担

    設備工事を実施する際、居住者の生活制限(日中の排水制限・断水・断湯)は避けられない。しかもその生活制限は自身の住戸内工事実施の間だけでなく、同じ系統内で工事が実施されている期間中は継続してしまう。このマンションの規模の場合、一般的に上層階の生活制限は連続6~7日間になる。つまり一週間以上、日中の排水制限・断水・断湯が続いてしまうのである。 この負担を和らげるため、翔設計が独自に工程計画を工夫し、全体の工事期間を延長することなく、連続する生活制限を上層階においても3~4日間にする計画を立案するなど、住民に寄り添った工事実施段階への工夫も組み入れた。


  • 資金計画

    修繕積立金が足りない

    既存の長期修繕計画には、もちろん専有部給湯管改修の費用は見込まれておらず、修繕積立金会計に対する検討も必要であった。



    増圧直結給水方式への変更により給水設備に係る将来の維持管理費削減は見込めたが、それだけでなく、排水管の洗浄効果を向上させ、期待耐用年数を延ばす工夫を組み込むなど、今回の設備改修に係る可能な限りのLCC圧縮を講じた結果、計画段階での試算では今後30年間で給水設備に関するメンテナンス費用約850万円の削減が想定できた。 ただし、それだけでは足らなかったため、資金調達の手段として改修工事に対する助成金の活用を検討した。 まず国土交通省の「長期優良住宅化リフォーム推進事業」による支援活用を検討したが、今回改修を計画している設備以外の範囲も改修する必要があるだけでなく、1/3という補助率とともに補助限度額が定められており、不足を補うには不適当であると判断し見送ることとした。 次に令和2年度から新たにはじまった国土交通省の「マンションストック長寿命化等モデル事業」という補助事業のうち、「長寿命化改修工事の工事支援型」の活用を検討した。この補助事業では1/3の補助率設定はあるが、限度額は設定されておらず、今回の計画に最適であると判断し、この補助事業にチャレンジすることとした。


    参考:マンションストック長寿命化等モデル事業(国土交通省)

    「マンションストック長寿命化等モデル事業」へのチャレンジ

    「マンションストック長寿命化等モデル事業」は先進性・先導性が高く創意工夫を含む長寿命化に向けた改修を実現するための支援事業であり、プロジェクト提案後に有識者による審査により決定する。つまり、要件を満たしていれば受給できるものではなく、申請をしても審査に受からなければ受給できないのである。 申請の際には審査対象となる提案書の作成が必要なこともあり、対象が全国であるにもかかわらず令和2年度(全3回)の募集に対して申請が10件。さらに採択は僅か3件(長寿命化改修工事の工事支援型)と、極めてハードルの高い支援事業であった。 しかし、マンションの健全な長寿命化を真剣に目指す管理組合と、そのコンサルティングを託された翔設計の相互信頼と努力、そして熱意により、審査を通過し、国により採択され、チャレンジは見事、結実した。これにより工事費の1/3を助成金で受給することが確定し、改修計画の実行に向けた資金の目途がたった。


  • 改修計画の実行

    合意の形成

    今回のように住戸内の工事や生活制限が伴う工事の場合、区分所有者の合意・協力を得ることが不可欠である。 そこで、マンションの館内広報だけでなく住民説明会を複数回実施し、劣化調査結果、計画検討の途中経過、漏水事故の被害内容・加害者の対応等を都度広報、改修工事の必要性を区分所有者・賃貸者の双方に周知した。 また、工事への不安や疑問、意見などを集めるために投書箱を活用し、個別対応や追加説明だけでなく、計画への盛り込む必要がある内容なのか検討のうえ、必要に応じて計画の見直しを図るなどの手間を惜しまなかった。



    さらに各世帯のリフォーム状況や不具合状況を把握するために全戸アンケートを実施して、合意形成の支障となるものを事前に予測し、考慮すべきリフォームや不具合状況への対応策をブラッシュアップし、区分所有者の合意形成に活かした。 なお、一定の条件を満たしたリフォーム済み住戸(適正に配管全面更新を済ませていた住戸)に対しては「修繕積立金から一定額の補償を要求できるようにする」という配慮も怠らなかった。


    マンションの健全な長寿命化の実現へ

    この「給水管・排水管・給湯管一括更新工事」計画は2021年の総会において承認され、工事説明会、全戸調査を経て、工事に着手し2023年3月頃に完了する予定となっている。


    実施の住戸内工事の様子

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